今年お稽古した「文蔵」。本番の前日、万作先生ご指名の補講があるほど厳しかったけれど、面白かった。
また、チャレンジしたい曲です。
2016年から昨年2023年まで、ずっと親子共演、主に子方が活躍する曲ばかりお稽古をしてきた。井杭の算置は、それなりに親も稽古の負荷は大きかったけど、それ以外は子方がきっちり狂言できるかを親がサポートするもの。万作先生に、親次第と言われていましたから、毎回倅の稽古を後でおさらい出来るように、自分の稽古はそっちのけでした。
過去にお稽古したことのある曲であれば、段取りも把握しているので気持ちの余裕がありましたが、全くの新しい曲は毎回ぐったりです。でも、自分の出番のところは、シテの倅が演り易いように、つけていくのです。
折角斯界の至宝・万作先生に教わっているのに、勿体ないなぁと思っていたのです。
親子9回目の今年、倅も中学に進学し、万作先生に稽古付けてもらえる内にやらせてもらえるものをと、万作先生の十八番・文蔵をお願いしました。
文蔵の太郎冠者は、倅ではダメと言われるかと思いましたが、何とかお許しを得ました。
倅には、狂言の舞、謡、語を万作先生にお稽古をつけてもらえたらと思っていましたので、倅本人が語を稽古しなくても、親がバシバシとしごかれるのをみていれば、きっといつか身になるでしょう。倅本人が語を稽古するとなると、膏薬練ですかねぇ。私も倅もトンボ切れないけど…
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さて、この文蔵。源平の合戦、石橋山の合戦の語がメインです。いまでも、小田原から伊東に向けて進むと石橋山の古戦場の史跡があります。大通りを鈴廣の支店の先の小道を右折して、細い山道を上がると佐奈田与一義貞(義忠とも)と俣野景久が組み合い、佐奈田が討ち取られた場所に彼を祀る佐奈田霊社が建っています。
この夏、スズキの人気の軽自動車・スペーシアを買ってしまったので、それで遠出ついでに本番前にお参りしようということになり、山の神の運転で9月の連休中に出張ってきました。

■真新しい幟と倅
今では珍しい神仏混習なため、神社ではなく、霊社としているのだとか。
社務所の当番の方が言うには、喉にご利益があるので楽器演奏者や歌舞伎役者がよく来られるのと同時に、狂言関係者も来られるとのこと。文蔵の語を奉納される伊こともあるとか。ネットでも、確か見掛けたことがありますね。
江戸時代から講が盛んになったようで、そろばんの塚もあり、毎月与一の命日に例祭が行われているようです。
わが家が参詣中にも二組ほど、拝殿していました。

■本殿にお参り。三浦家の家紋と奥には佐殿(すけどの・源頼朝公)直筆の書状が。
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一方、乳母親の文蔵(陶山文三家安)。与一の亡骸が埋められていたという大松を下って行ったところに、ひっそりとありました。
佐奈田霊社とは別のお寺さんが管理をされているようです。

■急な階段を下りていくと、文三堂。その脇が、武者二騎が転がり落ちたねじり畑。

■文三堂もそこそこ管理はされていましたが、ここにお参りする人はいるのだろうか。
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現場を知って語ると、また声に力が入りますね。
稽古や本番を聴いていた山の神、武者二騎が組み合う場面は、手に汗握ったと言ってくれました。
うれしかった。
先日、通しの動画を確保しましたので、30分ちょっとの動画をご紹介します。
改めて見ると、気が付かなかったチョンボを見つけてしまい、やるせなくなります。
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さて来年2025/9/15(祝・月)@渋谷・セルリアンタワー能楽堂の万乃会、我らは二人袴の聟と親を演ることになりました! 小舞が三本あって、稽古が始まる前に、今から倅にパロディになる前の正常版の謡と小舞を仕込まないとまずい。おざなりじゃ出来ないよぉ。
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