元気か、元気よー、元気か
先月末から掛っていたWILLCOM(ウィルコム)のCM「通話無料 父娘編」。(30秒、60秒、90秒のうち60秒がいいな)
父とこの春大学進学で上京したばかり娘の物語。
通常携帯電話のCMに登場する若い女性は、しっかりしたとかセンスのある、要領のよさそうな都会娘。でもこのCMは対極の設定。きっと父親は心配だろう。用がなくても「元気か?」と電話を掛けるのも肯ける。
最初の頃の父の「元気か」の問い掛けに答える娘の「元気よー」。この語尾の「よー」が暖かいんだよなぁ。都会では中々聞くことの出来ない、いい意味での内輪向けの音感。
それが、都会の孤独に直面して、父「元気か」娘「元気」、父「元気か」娘「元気よ」、父「元気か」娘「元気だよ」と段々トーンが変わってくる。孤独感、焦燥感。声は嘘つけない。同じ「元気」という短い答えでも、気持ちは伝わるんだなぁ。会話は言葉の意味のキャッチボールだけじゃないということを再確認させてくれる。
☆ ★ ☆
狂言の台詞でも、同じような言葉を何度も繰り返すが、みんなニュアンスが違う。会話だから、間や相手への台詞の渡し方で、その違いを出せるんだけどね。稽古で先生からポイントを教えてもらうのは、主にその点。音や拍子の違いより、体得するのが難しい。一門の若手に注意することしばしばらしい。恐らく気になる点というのは、昔先生自身もよく注意させられたんだろうなと想像する。
強がった娘の申し出に、父が答えた「元気か」は、「頑張れよ」「応援しているからな」というメッセージ。文字通りに言葉を受け取れないところが、狂言の水掛聟などで、舅が婿の肩を持った娘に言い放つ「もう祭りには呼ばぬぞよ」という台詞と重なるなぁ。
会話って奧が深いと思う。
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TVでは今は趣が180度変わったものに変わってしまい残念だが、映画館ではしっかり父娘編が掛っているようだ。
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