ござる乃座(2008/2/27@国立)
ござる乃座のチケットが取れると聞き、仕事を撤収後千駄ヶ谷へ。今の時期は珍しくカチカチ山じゃないのと、今回の番組3番のうち、内沙汰も塗師平六も未見だというのもある。2005年の暮れ以来だから、2年ちょっと振りの萬斎尽くしとなった。
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内沙汰(右近:野村萬斎、妻:石田幸雄)
因幡堂(夫:野村万之介、妻:深田博治)
塗師平六(塗師平六:野村萬斎、師匠:野村万作、妻:高野和憲、地謡:石田幸雄他)
内沙汰にしても、塗師平六にしても、萬斎のシテの笑いはどうも軽い。軽妙洒脱というのではなく、こそばゆい軽さか。臭いとは違うんだけど、何かズレている気がするんだよなぁ。
大学を出てから彼の新作を除く狂言は万之介狂言の会で見るくらいで、その時も同じ思いをしていたっけ。今日はこんな感じなんかなぁ、と軽く考えていたが、もうそういう萬斎風という狂言の型になっていたんだな。
この笑いに付き合っているのは、20代までの女性かな。客層の7割が20~30代の女性だからいいのかもしれないが、何となく、これは違うだろう、上っ面の笑いだろう?という思いが込み上げて来る。和泉流の三宅派の狂言って、洗練された美意識を持っているはずなんだけど、崩れているんじゃないかなぁ。
その反面、深田演じる因幡堂の妻。そっけない。教科書風と言ったらいいのか。例を挙げれば、シテに絹担ぎを取られる時に、もっといやいやしたら良いのに、さっと手を離してしまうところとか。たまに石田さんのを見てても思うことがあるから、万作さんは基本形しか伝授しないのかもしれないのか、色をつけるのを嫌がるのか。下衆の勘繰りか。
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今回は、狂言における「夫婦」に焦点をあてているとか。このようなテーマを作っての狂言の会の構成には、あんまりうまくないんじゃないかなぁと思う。昔々、僕が学生の頃なんで、20年ほど前のことだ。早稲田の部室にふらりと立ち寄った万作さんとお茶をする機会があった。万作さんが国立能楽堂の番組についてぼやいたのは、その時だったと思う。万作さんら能楽師が番組立てを考える時に、似通ったものを外すのに、国立能楽堂はテーマの似たのをくっ付けてやりたがる。研究者にはいいんだろうが、興業としては疑問だ。博物館じゃないんだ。という様なことだったと記憶している。
今、万作さんはどう思っているのかわからないけど、テーマで固めた構成は、何か窮屈だったな。
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この会の無料で配っているパンフの曲目解説は武蔵野大の三浦裕子先生が執筆。これがなかなかいい。蘊蓄の混ぜ具合、登場人物のキャラの説明など、重鎮方の堅苦しいのは飽き飽きしているので新鮮だ。彼女の本は、「能・狂言の音楽入門 」(音楽選書)を読んだことがあったか。文学から入っていく研究者が多い中、彼女は異色なのかもしれない。
この人選は評価したい。
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