狂言初心者向け好番組
今週前売り開始の9月25日の国立能楽堂の狂言の会はいい番組だなぁ。これこそ、今年の狂言初心者向けベストステージではないか。
狂言 萩大名(はぎだいみょう) 茂山千作(大蔵流)
狂言 縄綯(なわない) 野村万之介(和泉流)
狂言 業平餅(なりひらもち) 山本東次郎(大蔵流)
もし、今の時期に初めて狂言を見たいのががという相談を受けたら、この日の舞台を奨める。
理由は次の点だ。
1.演者がいい。
2.番組が一つの流派一門に偏っていない。
3.狂言の良さを引き出している演目である。
4.コストパフォーマンス。
まず演者。演者がいいと、もう一度見ようという気になるものなのだ。人間国宝だから良い。そうでなければ悪いというのはない。お奨めの茂山千作翁は、人間国宝に指定される前から、一押しの演者である。
その千作翁は、兎に角舞台に居るだけで観客を引き込んでしまう魔力を持っている。途轍もない爺さんだ。私が初めて狂言を見るという方を連れて行くとしたら、茂山千作さんは絶対必要な要素。しかも、千作翁のシテの番組。出来れば派手な大笑い出来る演目がいい。今回の萩大名のシテは、ドンピシャだ。
その上、相手も息子、孫ではなく、千之丞、忠三郎と安定感のある組合せ。力関係が申し分ない。
綯綯の万之介先生(一往、私の先生だから敬称を付けます)。これも相手役が万作、萬斎と万作一門で一番の組合せ。
トリの業平餅。これも東次郎家の面々が則直以外勢揃い。
爆笑の千作。ホンワカした万之介先生。悲哀漂う東次郎。三者三様が楽しめるのだ。
これが2番目のポイントに繋がる。
狂言は大蔵、和泉の二派ある。この流派内でも和泉なら万蔵家(三宅派)、又三郎家(野村派)、狂言共同社と3つに分かれ、台本(演出)もそれぞれ微妙に異なる。最近の狂言の会(狂言尽くしの会)は、その一流派・一門で全てで番組が構成されていることが多い。他流と混合の番組を拝めるのは、ごく一部。この国立能楽堂主催公演を除くと、もう数えるほど。同じ一門で一つの興業をやってしまえば、制作は楽だからと理由が大きいと思う。演者の調整を含めたコストも馬鹿にならない。それもあるから、地方公演は一流派だけのが多いのはないかな。
見る方としては、いろんな流派を一度に見ることによって、それぞれの良い面悪い面を一度に堪能できる。演る方としても、一門だけの場合がぬるま湯とは言わないが、他家が楽屋にいることで恐らく鎬を削った舞台になっているはずだ。
さて、3つめの演目。これも初心者向けは重要。狂言は能の合間のコントと世間一般では思われているが、そう簡単には割り切れない。爆笑笑いもあれば、悲哀の笑いもある。蘊蓄満載の言葉遊びもあれば、子供が無為邪気に笑える連呼風CM笑いもある。ブスや片輪を貶す攻撃的なのもあれば、笑いの無いものまであるのだ。初めての人には、言葉遊びのような頭で考えるようなものよりも、身体で伝わる番組がいいと思う。今回の3番は全く更の状態でも面白いし、言葉遊びや蘊蓄があればより一層楽しめるもの。
最後のコストパフォーマンス。これは国立であるから尚更。正面で5,000円。中正でも2,600円。変な小劇場ものを見るよりずっとお徳だ。5千円出して、このような番組は滅多にない。予算減なのか、国立の狂言の会の公演も知らない間に減っているんだよね。
☆ ★ ☆
こんな偉そうなことを言っているが、恥ずかしながら今年はまだ一本も能楽堂で公演を拝んでいない。そもそも、大学出てからあんまり能楽堂に通ってない。学生の頃は年間300曲近く見ていたが、今は年に10番見るか見ないか。大口叩ける身分じゃないが、相談されれば親身になって考えましょう。これが狂言にお世話になったものの勤めですからね。
と、国立の狂言の会の宣伝をしてしまった。万之介狂言の会も秋にありますので、これもお楽しみに。
Comments
こんにちは(^^)
この狂言の会の番組はホントに秀逸ですよね!
初心者に立ち返って観てこようと思います。
万之介先生の縄綯は楽しみです~
Posted by: namipi | 2009.08.11 16:21
チケット、押さえましたか!
こっちは期末の金曜なんで、断念してます。
もう一週早いと気楽なんですけどね。
Posted by: ぶ | 2009.08.12 11:31